日々の潜水・撮影活動の中でキラリと光ったシーンをまとめてみました
RS2号機、断末魔の叫び


お互いの手と手をかざして触れ合う2匹のヤドカリ。
「おお、ETで見たようなシーン・・」
そう思って撮影したこの写真が、オレのRS2号機の最後のカットとなりかけたことなど、このときには思いも及ばなかった。

東京湾は砂泥の海底。
海底に放置するだけでヘドロの素が降り注いでくる。
この日も撮影から帰って、泥を取り除くべくシャワー室で念入りにシャワーを浴びせた。
その時、ぞくぞくっと胸騒ぎが・・
はっとした。
「さっきフィルムを取り出してちゃんと裏蓋を閉めたのか?」

RSでは頑丈なパチン錠で防水のためのOリングが組み込まれた裏蓋が固定される仕組みになっている。
恐る恐る見てみると、ガーン!!
案の定裏蓋が閉まっておらず1ミリほどの隙間が・・
こんなわけで、シャワーの水をRS2号機の内部にたっぷりと吸い込んでしまったのだ。
さてさてそれから大慌て。

このニコノスRSというカメラ、1990年代に本格的水中1眼レフとしてニコンから大々的に売り出され、評判も良かったものの、わずか6年で製造が中止された。
それから10年以上経ち、ニコンの在庫保有期間やアフターサービスもとうに切れ、その後の対応は修理技能を継承された特別な会社が引き継いで細々とメンテナンスが行われている状況だ。
当然、修理代金も高い。

これまで約15年間、常に潜水の度にオレの横にはこのRS2号機があった。
オレは一生分として現在1号機から5号機までの5台のRSを保有しているが、この2号機は初期からずーっと一緒だった思い入れの一台。
外観はキズたらけ。角はすり切れて塗装が剥げ、地の特殊合成樹脂の鈍い灰色が顔を出している。
共に千本ほど潜っているだろうか。
そんな訳で、このカメラは愛着のカタマリなのだ。

すぐに、修理に出した。
宅急便で出した翌々日、修理担当のMさんから連絡があった。
「早速中を開けてみたんですよ。そしたら思いの外水が入ってまして。そしてファインダーも水で曇って、液晶が正常に表示されなくなってますね。こうなると、中の水が海水か淡水かにかかわらず、メカニカルな部分を全部取替え、そうなると莫大な費用がかかってしまいますがどうしますか?」
オレは、無念でいっぱいになりながら、
「・・・・。そうですか、それじゃしょうがない、諦めますのでそのまま返却して下さい。」
涙目でそう言うしかなかった。

あー、何たるうっかりミス。
もうちょっとあの時、ちゃんと確認していればなあ、と自分を責める。
こんな形で2号機とオサラバするのは忍びない。
なんとかならないのか。

悶々としながらその翌日、Mさんから電話がかかってきた。
「実は、修理中止で返却のためもう一回組み直し試しに電源を入れてみたところ、壊れた状態を一度確認しているのにもかかわらず、なんと正常に動くんですよ。もしかしたらこのままよく乾燥させて部分修理をすればいけるかも知れません。いずれにしても水の被った部分はこれから腐食の可能性があるので、よく点検してやってみたいと思います。値段も格段に安く済みそうです。どうしますか?」

どうしますかって、リーズナブルな値段で修理可能ならどうぞガンガンやってくれ!
ギリギリの崖っぷちから突然光明が見えてきた。
こうやって、修理されてきた2号機。
これからまたオレのそばで末永く活躍してくれそうだ。

しかしこの一連の騒動を思い返してみれば、修理のMさんが一度投げ出した翌日に、神がかり的なパワーで一旦正常に戻ったのは、その時まさにRSが「オレを見捨てないでくれ~」と断末魔の叫びを上げたに違いない!と自分には思えてならないのだ。

[2008年12月23日東京湾にて撮影, NIKONOS RS, 50mmMacro, PROVIA, 1/30, f8、ストロボ]

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この「RS2号機、断末魔の叫び」の記事を見て、下の写真でタカアシガニを照らしてくれたKさんからお便りをいただいた。



Kさんからのお便り曰く、
「よかったですね~。懐かしのタカアシガニ事件を思い出しましたよ(笑)。」

そうそう、5年前、この時の撮影ではオレとKさんとRSに13mmFisheyeレンズを付け、互いにモデルになりながらシャッターを押しまくったっけ。
でも不幸なことにあせったKさんはRSを水没させてしまった。

そんなこともあったよなぁ。
懐かしく思い出した。
Kさんにとってはいい思い出じゃないかもしれないけど、もう時効だよね。

またどこかで大物の撮影をご一緒させてください。


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